積極的不登校という選択

こどもばんぱく舞台
日本のイノベーターU18

Vol.1イベンター/自己表現家 中井けんとさん

 中井けんとさんの人生は、いじめで思わぬ方向に大きくシフトした。

 けんとさんは、小学4年生でいじめを受けて 5年生から不登校になり、その経験を絵本にしてイベントで販売したことがきっかけで、現在では3年間で総動員数5,400名の 【こどもばんぱく】 をはじめとしたイベントを主催する、 イベンター/自己表現家 として活躍を続けている。

なお、この 【こどもばんぱく】 は映画化され、2021年5月公開予定だが、けんとさんに、いじめにあってから、現在に至るまでの道程を語ってもらった。

こどもばんぱく舞台のこども
<こどもばんぱく 舞台のこどもたち>

学校に行き続けていたら死んでいたと思う

「もし、いじめを受けても我慢して学校に行き続けていたら、きっと自殺していたと思います。不登校になる前に、何度か自殺未遂のようなことをしていたので。」

 淡々と話すけんとさんは、現在N高等学校の1年生だ。

 道徳の授業で、自分の考えではなく「模範解答」を言わなければいけないのは嫌だったが、学校や先生が嫌いだったわけではなく、ただただいじめが原因で学校に行けなかったのだと話す。

 そんなけんとさんは、もしもいじめがなかったら? の問いに、「もともと僕、人と遊んだり交流するのは嫌いじゃなくて、むしろ好きな方なので、友達と楽しく普通の学校生活を続けていたと思います」と語った。

こどもばんぱくこどもたち
<こどもばんぱく けんとさんとこどもたち>

言葉でいじめて気が済むなら僕は我慢しよう

 肢体不自由という特質があったけんとさん。

 歩いたり走ったりはできるものの、速度が遅い、転びやすいなどの問題があり、小学3年生まで肢体不自由学級に通った。4年生で健常の学級に移ったが、見た目でわかる身体的特徴により、いじめが始まった。

 クラスメイトから言葉の暴力が始まったとき、「言葉でいじめて気が済むなら、僕は我慢しよう」と思ったという。

 しかしそのいじめは、コンパスで手を刺されたり、階段から突き落とされたりといった、大勢での身体的暴力にエスカレートしていき、けんとさんはとうとう学校に行けなくなってしまった。

 そんないじめがあると知らなかったお母様は、学校に行きたがらないけんとさんを、なんとか登校させようとしたが、ある日学校についたとたんに泣き叫んでパニック障害を起こしたのを見て、事の深刻さを知り、不登校を認めてくれたという。

 「母は、先生からいじめはないと聞かされていたんです。学校側からは、『中井君が自意識過剰なだけですよ』と言われていて。

 僕はもともと話を盛っちゃうタイプなので、最初は信じてもらえませんでした」と、けんとさんは笑う。

中井けんとさん
<中井けんとさん>

 お父様は、不登校に関して何も言わず、けんとさんを外に連れ出してくれたという。そんなお父様について質問すると、「父は、周りから仏と呼ばれるような人です。周囲をイラつかせたり、常識がわからないところがある僕に対して、きちんと状況説明をしてくれたり、僕が主観的になってしまったときには、客観的な意見をくれたりします。いつも家族のために働いてくれている父に感謝しています」と語る。

 お母様に関しては、「親だからやめさせようと思えば阻止できることでも、僕がやりたいということは、一生懸命応援してくれます。わからないことを聞くと明確に答えてくれる、そんな人です」と言う。

 反抗期なので素直にお母様を褒められないと笑いながらも、いつも家事をしてくれてありがたいと、感謝を口にした。

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